LAST SMILE
「麗華!」
はっと我に返る。
気付くとあたしの長い爪は、
手首に食い込んでいて、
ほんの少し血が流れていた。
いつの間にか、
触ってしまっていたんだ・・・。
亜貴が苦しそうな顔をしてあたしの肩を掴んだ。
「しっかりしろ!そんなこと繰り返すな!
兄貴と・・・奏磨さんと約束したんだろ!?」
自分でもわかんない・・・。
なんで、勝手に動いてしまうのか・・・。
ただ、その赤く滲む血を見ていたら、
何も考えられずに済んだから・・・。
パン-
「いい加減にしろよ!!
そんなことしたって、
祐兎は帰ってこないんだよ!!
そんなこと、祐兎が
望んでると思ってんのかよ!?」
亜貴が、初めてあたしを怒鳴った。
亜貴が、初めてあたしを叩いた。
亜貴が、泣いてる・・・。
「亜貴・・・
泣かない・・・で・・・」
弱々しく、
絞り出すような声でそういった。
あれから、初めて声を出した。
恐る恐る出した声は、
自分のじゃないと思うくらいか細かった。
亜貴が、
あたしをじっと見つめてる。
「泣かない・・・で・・・?」
「ばか。泣いてねぇよ・・・。
泣いてねぇ・・・」
亜貴が、目を伏せた。
ああ。
亜貴が泣いてる。
この人は、
すごく綺麗に泣くんだ。
そして、その溢れる涙を必死に抑えて、
顔を上げるんだ。
そして必ず、笑うんだ。