LAST SMILE
みんながあたしを見てる。
みんなが、
信じられないとでもいうかのように、
あたしを見てる。
あたしは、
あの時のあたしでここに来た。
喪服なんかじゃない、
最期のライブの服装で。
みんな、びっくりはしていたけど、
責める人は誰もいなかった。
式を運営する責任者が出てきて、
あたしを止めようとすると、みんながそれを止めさせた。
みんな、あたしを見てる。
不思議そうに、興味深そうに・・・。
あたしは
遺影の中の彼の姿をじっと見上げた。
遺影の中の彼は、笑っていない。
ぶっきらぼうな顔で、
じっとこちらを睨んでいた。
あたしは目を閉じた。
目を閉じて大きく息を吸う。
そして-
「麗華・・・」
「これって・・・」
-なぁ、あれ、歌ってよ-
あたしは歌った。
この静かな会場で。
ドラムも
ベースも
ギターも
声援も
何もない、
この静かな場所で。
ふんわりと、
あの煙草の香りがあたしを包む。
まるで、
そこにあなたがいるようで・・・。
声が聞こえるみたいで
ギターの音が聞こえるようで
あのハスキーな
かすれ声が聞こえるみたいで
低くて綺麗な、
心地いい声がきこえるようで。
ねぇ、祐兎。
聞こえてますか?
あなたの好きだといった歌を
歌っているよ?
聞こえてますか?
あたしの、最後の歌を。
あたしの、精一杯の愛の歌を・・・。