LAST SMILE
「あのギターにあたしの名前を彫ってもらえて、
あたし、嬉しかったよ?」
“あんたの名前、入ってないじゃん”
-ギターそのものが“俺”だから-
-どうせいなくなる奴なんかの名前、彫ったって・・・-
「あの日、酷いこと言って、
叩いちゃってごめんなさい」
“おかしいのはアンタのほうじゃない!!”
そういって、叩いたあの手が、
あたしは痛んだ。
“死なないで”
そんな残酷な言葉をつきつけた。
あたしは、
あの時の言葉を後悔してます。
そうして、
あなたとはじめてのキスをした。
「あたしが勝手にいなくなると、
いつでも必ずきてくれたね」
“祐兎”
そう、あたしが呼ぶとあなたは必ず
“なんだよ”
そういってあたしを見つけてくれたよね。
名前を呼ぶと、今でも
あたしのそばに来てくれそうで・・・。
「最後のクリスマスライブ、
あたしはあんたと一緒に出来て嬉しかったんだよ」
“明日、俺がいなかったら―”
その言葉の先を、
本当は知りたかった。
初めてあたしを叩いたあなた。
苦しそうに顔をゆがめるあなたを見て、
あたしはまた、あの言葉を呟いた。
“死なないで”
そうしてあなたは、
生死の世界を彷徨ってしまったね。
あたしは、ICUに運ばれたあなたを
見ることが出来なくて、
ちゃんと
向き合うことが出来なくて・・・。
最後まで、逃げてしまったの。