LAST SMILE







何が何だか、
訳のわからないうちにあたしはステージ上にあがった。



歓声が沸き起こる。



なんだか、自分の通いなれた学校なのに、
見知らぬ土地に来たみたいな、そんな感覚。


今までこんな緊張したことないのに・・・。





「なぁ、あれREIじゃね?」


「あ、ホントだ」


「うちさぁ、ブログ見たけどさ、
 本当だったんだ?」


「マジで~?嘘―!?」






色んな声が聞こえる。


ぐるぐる、
頭の中をみんなの会話が目まぐるしく駆け巡る。


あたしが固まっていると、
祐兎が隣にすっと出てきた。




「どーもー。こんにちは。“Blue sky”です!
 さ、みんなもう気付いてんだろ?
 ReesのREIは俺、ギターのモッチーが連行した」



ちょっと!!
何言ってんの!?




でも、みんなの反応は意外といいもので、


返せよー!!とか、戻ってきてー!!とか、
拍手をするやつとか・・・。



なんで?

こいつが冗談めかして言ったから?



あたしが祐兎を見ると、
祐兎と視線が合い、祐兎は静かに笑った。




あ・・・。


また。




またこいつは無邪気に笑うんだ。




何か問題でも?
そんな顔をして・・・。




だから、あたしもどうでも良くなっちゃって、
祐兎がいきなり弾き始めたギターを聴いて目を閉じた。





何度も、
何度も練習した曲。



約1ヶ月っていう短い期間で、練習した曲。




これが終われば、
あたしもBlue skyのメンバーだ。







あたしは大きく息を吸って顔を上げた。








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