LAST SMILE
*
亜貴は黙って、
あたしの話を聞いてくれた。
あたしは泣きたくなるのを
必死に堪えて続けた。
「あたしが襲われたこと、
お兄ちゃんは知ったみたいで、
あの日の夜は、その友達ともめたんだって」
だからあの時、
お兄ちゃんは教室に・・・。
“大丈夫。お兄ちゃんが、ついてるから”
今でも、あの最期の言葉と、
頭を撫でられた感触が残っている。
「お兄ちゃんのバンド、“Sees”っていうの。
あたしたち“Rees”は、
頭文字からとってつけたっていったけど、違う」
お兄ちゃんを忘れないために。
お兄ちゃんの遺志を、受け継ぐために。
お兄ちゃんの思いに、応えるために・・・。
「でも、もうReesはなくなっちゃったけどね」
「どうしてそれを、俺に話してくれた?」
亜貴は初めてそこで口を開いた。
「あのね、亜貴は、
なんだかお兄ちゃんに似てるの」
「え?」
そう。
その優しさも、その仕草も、
その苦笑した顔も・・・。
だから、亜貴に、
勝手にお兄ちゃんを重ねていたのかもしれない。
「ごめんね。勝手に、そんなふうに甘えて・・・。
ただ、亜貴はなんとなくお兄ちゃんみたいだった。
お兄ちゃんが帰ってきたかとおも・・・っ」
それ以上、堪えきれなくて、
あたしの頬を涙が伝い始めたとき、
あたしの視界が暗くなった。
「亜貴・・・」
「ごめん。守ってやれなくて」
「え?」
「知らなかった?俺と麗華は、中学から一緒の学校だったって」
亜貴は、突然そんなことを言って、あたしを抱きしめた。
「知らなかった。ずっと、お前を見てきたつもりだったのに・・
お前が、そんなに苦しんでたこと、知らなかったんだ」
どうしたの?亜貴。
あたしたち、同じ中学だった?
守れなかったって何?
ずっと、見てきたって?
「この手の傷も、お前がどんな立場におかれてたのかも、
俺はさ、ガキだったから、何にもわかんなかった。
奏磨さんに頼まれてたのに、守ってやれなかったんだ」
「え・・・?」
「ごめん。麗華。何もしてやれなくて」
「亜貴・・・」
亜貴は、静かに話し始めた。