LAST SMILE





亜貴とお兄ちゃんが会ったのは、
亜貴が1年生だった冬。


お兄ちゃんがSeesを結成しようと、
亜貴に声をかけたのがきっかけだったらしい。



亜貴は当時、
出来ないからと言って断ったみたい。



それでもお兄ちゃんにおされて、
ベースを教わり始めた。



亜貴はお兄ちゃんに気に入られていたみたいで、
よく一緒に会って話をしていたんだって。



そして、お兄ちゃんが卒業したあと、
亜貴の家にお兄ちゃんが訪ねた。



“妹をよく見ていてやって欲しい”って、
そう一言だけ言いに。






「なんで・・お兄ちゃんが亜貴に?」


「わかんね。そん時はほんとに、マジでわけわかんなくてさ。
 ていうか、奏磨さんの妹なんて、見せてくれなかったし、
 どんな奴だかわかんねぇよって思ってさ」



小さく苦笑する亜貴。


あたしはじっと、
リストバンドで覆われた手首を見た。




「でも、お前が屋上で歌ってたのを偶然見たとき、
 なんか、奏磨さんが歌ってくれるときと同じだったんだ」



「え?」




お兄ちゃん、歌なんて歌ってたの?


前に、あたしが歌を歌ってほしいって言った時は、
音痴だからダメだって歌ってくれなかったのに。



「同じって・・・」


「歌うときの声、声の高さは違うけど、歌い方がそっくりだ。
 その時、ああ、こいつが奏磨さんの妹なんだって分った」




亜貴はそう言うと、あたしをじっと見つめた。




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