LAST SMILE



「でも、その時のお前、
 全然苦しそうでもなかったから、奏磨さんが
 なんであんなに必死で俺に頼んだのかわかんなかった」



必死で・・・?



お兄ちゃん、
あたしがあんな行為をしたのが心配で、

それで・・・。



「高校に入ってからも、バンドに誘われてたからさ、
 俺は奏磨さんと同じ高校を受験して、
 そのあと、お前も同じ高校だからよろしくって頼まれてさ」




「そっか・・・」


「奏磨さんが亡くなる日、俺のところに奏磨さんが来た。
 “良く見てくれって、頼んだのに”って」


「何で、お兄ちゃんはそんなこと・・・」




亜貴は、悪くないのに。


ただ、あたしがちゃんとしなかったから。




「何があったのかなってずっと思ってた。
 そしたら、次の日、バンド仲間の別の先輩から
 連絡が来て・・・」




亜貴は目を伏せた。





「ふと、最期に言われた言葉が頭を過ぎったんだよ。
 だから、探した。ずっと探してた」



あたしを・・・?



自分だって、慕ってた先輩が死んだって
受け入れられないはずなのに、



それなのに、お兄ちゃんの言葉を信じて、
あたしを捜してたの?




「いるはずないのに、
 来れるはずないってわかってたのに、
 なぜか、学校を探した。

 そしたら、お前がいたんだ」





あの日、



お兄ちゃんが亡くなってから、
初めて屋上に行きました。




悲しくて、悲しくて、
涙なんて出なかった。






そして、歌ってたんだ。



どこかで聞いたことのあるような、
そんなうろ覚えの歌を。





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