LAST SMILE



「奏磨さんがいるようだったよ。まるで。
 同じ歌い方で、同じ歌を歌うなんて・・・」


「同じ歌を?
 じゃあ、あれはお兄ちゃんが・・・」




うろ覚えだった歌。


いつの間にか、
お兄ちゃんから教わってたんだね。



「泣きもしないで、前を向いてたお前だけど、
 それを見て、俺は初めて実感した。
 
 ああ、
 この子にこんな表情をさせたのは俺だってさ・・・」








いつも大人っぽい亜貴が、


いつも冷静な亜貴が、


そこで初めて、泣いた。







ねぇ、お兄ちゃん。


なんで、亜貴にそんなことを言ったの?


どうして、そんなこと頼んだの?


亜貴は、理不尽なその約束を
果たせなかったことを悔やんでる。



どうしたらいい?


あたしはどうすればいいの?


この目の前で綺麗に泣く男の子に、
なんて声をかければいいの??




「俺、決めたんだ」


「え・・・?」


「これからはお前の傍にいようって」




亜貴は言った。


彼の横顔は何かを決意したような、
真っ直ぐなものだった。




「だから、んな顔すんな」


「え?」



「笑ってねぇぞー!?」


そういった亜貴は
いきなりあたしのほっぺを引っ張った。




「いたっ、ちょっ、やめてよ亜貴!!」


あたしが笑うと、
彼は手を離して苦笑した。





「戻るか」


「うん・・・」






ねぇ、亜貴。




亜貴はちゃんとお兄ちゃんとの約束、
守ってくれてるじゃない。





だって、あたしはあなたに支えられて、
今、ここにいるから。





こうして笑って、いられるんだから・・・。






< 70 / 173 >

この作品をシェア

pagetop