LAST SMILE



「おい、モッチー。どういう状況?」


「“サンキュ”って、何かっこつけてんスかぁ」


「・・・う、うっせぇ!てめぇら殴んぞマジで!!」



祐兎は顔を真っ赤にしてそう吼えた。
そして、あたしをじっとにらみつけると、
また怒鳴った。


「お前なぁ!誤解を招くような
 言い方すんじゃねぇよ!!気持ち悪ぃ」


「なっ!?だってほんとにいったじゃない!!」


「うっせぇ!!黙れ。お前あほだな。ほんと」


「はぁ?大体あんたが
 勝手にあたしを連れまわすからでしょ!?」










―ビーン!!!





「いっ!?」






後ろで、鈍い音がした。


そして、亜貴の声。


あたしたちが振り返ると、
亜貴が手の甲で頬を押さえていた。



「亜貴!?どうしたの!?大丈夫?」


あたしが駆け寄ると、
亜貴は短く返事をした。


どうやら、弦が切れたらしかった。


亜貴の頬を見ると、
深く切ったのか、血が流れていた。




「おいおい、どうした?亜貴。
 お前がそんなヘマするなんて、珍しいじゃん」


祐兎がからかい半分にそういった。


亜貴は苦笑しながらそれを上手くかわす。


「はい。一応絆創膏は貼ったけど・・・。
 家に帰ったらすぐに消毒しなきゃ・・・」


「サンキュ。麗華」


「あ・・・。亜貴までサンキュ、だって」


「祥吾」



亜貴がすっと磯部くんを睨みつけると、
磯部くんは小さくなって謝った。


亜貴が怒ると、どうやら祐兎よりも怖いらしい。


「ねぇ、亜貴。どうしたの?何か悩んでるの?」


「ん?別に。何もねぇよ。麗華」



そういって苦笑する亜貴の顔は
いつもとはどこか違う気がして、あたしは不安だった。


亜貴、大丈夫かなぁ。





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