Wednesday ☂

次の日、久々に朝から雨が降ってた。

アイロンでも真っ直ぐにならない髪
お気に入りの靴がドロドロに汚れる

だから雨は昔から嫌い。

私はいつもより時間のかかった朝準備を済ませて、急ぎ足で家を出た。


そういえば、昨日…
由紀ちゃんと何気なく昼休みに会う約束してた、よね。

そうやって考えごとをしながらはめようとしたせいか、
運悪く水たまりの中にピンクの手袋が落ちた。

「あ…」

最悪、この前買ったばっかなのに…。

傘を左手に持ち替えて拾おうとかがんで、濡れてしまったピンクの手袋を見つめる。

今日は、ついてないのかな。

はあ、とため息をつくと同時に
目の前の手袋が誰かに取られた。

「指んとこだけだし、タオルで絞れば乾くだろ。」
「へ?…あ、ありがとう…」

上から聞こえる声に立ち上がると、
見たことのある…あ、どうしよう。名前が出てこない。

「あ、ちょっと待て。タオルあるかもしんねぇ。」
「あの、ほんと大丈夫です!ありがと「手赤くなってるから」
「でも…」
「あ、やば。俺もタオル忘れてるし…
…しゃーねぇな。」

これ、やるわ。と渡されたのは
私の濡れた手袋ともう1つ、黒の手袋。

「それはめらんねぇし、俺のだけどないよりマシだろ?」
「えっ、いや…だけどそんなの悪い…ですし…」
「いいよ。べつに。」

じゃあ俺急ぐから、と学校方向じゃない方へ歩き出す…東、麻くん…?
そうだ、…東麻くんだ!どっかで聞いたことある…思い出した!

「東麻〔とうま〕くん!!ありがとう!」

離れた距離に出来る限りの声で叫ぶと、
降りかえった彼はひらひらと手を振った。

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