Wednesday ☂
「あー…、もうびしょびしょだし…。
ごめんな、寒くない?」
「…ちょっとだけ…寒いかも、」
「だよなー…。
あ、じゃあとりあえず俺んち来る…?」
近いし、さ。と言葉を付け足す由紀ちゃんにコクンと頷く。
気まずい、なんて考えた自分が嫌で。
馬鹿みたいで仕方なかった。
目の前の彼は私に一生懸命、気持ちを伝えてくれたのに。
そんな彼の優しさを無駄になんて出来ない…
「安達、手…赤い。」
「え?…そ、うかな?」
スクバの中の黒い手袋が頭に浮かぶ。
東麻くんにも朝、言われたな…
「冷え症、なのかな…
でも大丈夫だよ!手袋あ「手、…貸して?」
「へっ…、あ…うん…?」
言われたままに左手を差し出すと、
由紀ちゃんのあったかくて大きな手にギュッと握られる。
「…由紀ちゃんまで冷えちゃうよ、」
「いいよ、手袋じゃここまであったまらないし。」
「…あ、りがと。由紀ちゃん。」
「…んーん、安達のためなら何でもするって決めたから。」
ていうか手ちっさいなー、と私が気を使わないでいいように気を回してくれる彼の言動。
手を繋いだまま相合傘の帰り道は長いようで短くて…
きっと周りから見ればカップルにしか見えないんだと考えると、恥ずかしくて仕方がない。
いつの間にか着いていた昨日振りの由紀ちゃんの家。
気が付けば、私の手も温かくなっていた。