Wednesday ☂
「由紀ちゃん、あのね…私「その前に聞いてほしい。」
声を重ねる由紀ちゃんの表情は
今の私とよく似て、なにかを決めたように見えた。
「…俺、安達のことが好きだよ。
何度でも言う、すっげぇ好き…。」
…聞き、たくない。
今の彼の声を聞くと決意が緩くなってしまいそうで…
「…ずるいこと言うとさ、
東麻のとこに、行かないで…ほしい。
俺、自分がこんなに嫉妬深いと思ってなかった。」
「やだ…やだ、よ…もうそれ以上言わないで…」
「安達が、俺のこと好きになってくれるの…ずっと待つから。」
「由紀ちゃんやめてっ…私、由紀ちゃんのこと…」
「嫌いでもいいよ、東麻が好きでも…
なんでもいいから…傍から離れないでよ…」
廊下には、
私と由紀ちゃん以外、誰も居なかった。
ぽつんぽつんと響く声。
「安達。俺ね、お前以外を好きになれないよ…」
もう、耳は塞げない。
聞こえないフリも、意味がない。
由紀ちゃんの長い指が私の頬をなぞる。
「…っ、由紀ちゃ…ん…」
「誰のために、…泣いたの?」
情けなくもまた泣いてしまう私は
首を横に振るしか出来ない。
言わなきゃ、いけないのに……
優しさも嫉妬も
彼の想いがすべて、私につたわっていく…
「…っ…おい!?…安達!」
いきなり暗くなった視界の先に聞こえたのは、名前を呼ぶ声だけ。
…あれ、…?
今、…なに…頭痛い、…やだ…
どんどん薄れていく感覚に、
力の入らない身体だけを感じる…
そこで 意識は途絶えた。