Wednesday ☂


「よかった…来てくれないって思ってた…」


6時 七夕公園

約束通りの時間と場所には
わたしたち以外 誰もいなかった。


「安達、俺さ」


「っ…由紀ちゃん!!」


精一杯の大声が静かな公園に響く。


「ど、どした…?
…っあ、ちょっと待って…俺振られる準備はまだ…」

わたしの声に驚いた由紀ちゃんは、
戸惑った様子でその場にしゃがみこんだ。


「振ら、ない…振ったりしないよ…」


「……え?」


その瞬間。

曇り空からぱらぱらと冷たい粒が頬を伝った。


「……へ、…あ…雨?…降って、…」


「ぷっ…ッ…あははっ!安達の嘘つき!
…降ってるよ?もう。」


「そ、そういう意味じゃ…!」


さっきまでの表情が嘘みたいに笑い始める彼は、強くなる雨を見つめる。


やっぱり…雨は嫌い。

雨もわたしなんかのことは嫌いで、
きっと意地悪してるんだ。



「…あの時も、雨降ってたな。」

「……そうだね。」

「雨男なのかなー俺。」

「…わたしかも。」

「そっか、それじゃあいいや。安達と一緒なら。」


静かに揺れ動く会話がぴたり、と止まる。


「………続き、 聞かせて?」


柔らかそうは茶色い髪は濡れて
セーターもびしょびしょになって


それでも、



由紀ちゃんはいつだって

すごくすごくかっこよかった。

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