Wednesday ☂


「はいはい、っ…沙綾ちゃん?
どうしたのそんなに濡れ…」

いつも通りの声がピタッと止まる。

「…っこんばんわ!
俺…いや、僕!橘 由紀って言いまっ…クシュン!」

案の定、由紀ちゃんを見て固まるお母さん。

…無理もない、今まで男の子を連れてきたことなんてなかったし。
二人とも、ずぶ濡れだし…。

「お、お母さん…とにかくタオルお願い…」

わたしの声にうなづいたお母さんは洗面所からタオルを急ぎ目に二枚持ってきてくれた。
なんとか状況を飲み込めた、みたい。

「スイマセン…ありがとうございます。」

「いえいえ、…えっと
橘くんは沙綾ちゃんの…お友達?もしかして、」

「お母さんっ!」

「だって気になるもの…
沙綾ちゃんがうちに男の子連れてきたの初めてじゃない。」

「…も、もういいってば…」

隣をみれば どことなく嬉しそうな由紀ちゃんが、
お母さんの問いに真剣に向き合う。

「…僕は沙綾さんが好きです。
…だから、絶対に泣かせたりしません。
っ危険なこともさせません、門限内に必ず家まで送ります。
それから「もう橘くんに任せるわ!娘を宜しくね!」

…由紀ちゃんが結婚でもする勢いで話し始めたと思ったら
お母さんはすでに目を輝かせて彼を見てる。

……まだ、あの…気持ちを伝えあって
10分しか…経ってないです。

「沙綾ちゃん!橘くんみたいな人、そう簡単にいないわよ。
彼を困らせないようにお付き合いしてもらいなさい!」


ハイ…と、困ったように返事をすると、
くしゃみの止まった彼がやったね、の口パクと一緒にわたしに微笑んだ。

こういう時の由紀ちゃんって、
…なんだかすごく上手だ。
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