Wednesday ☂
なんとかお母さんから解放されて、
やっとわたしの部屋に入ることが出来た。
……あれ、よく考えたら
わたしの部屋に由紀ちゃんが来るの初めて…
「ゆっ…ゆゆ由紀ちゃん!!」
「ん?」
「30秒だけ目閉じてて!お願い!」
素直に頷いて言うとおりにしてくれる彼を横目に、
机の上に散らばったプリントと床に積まれた雑誌を必死にクローゼットへと隠す。
「は、はい…大丈夫。ごめんね散らかってて…」
「そんなこと気にしなくていいのに、
安達らしくて可愛いな。」
「かっ……ッかわ、いい…って…」
なんとなく今は由紀ちゃんのひとつひとつの言葉が、
特別に聴こえて意識してしまう。
「……っへ、部屋!部屋の話…!」
「あっ…そ、そっかぁ…そうだよね!」
「い、いや…違う…あ、安達も可愛いんだよ!
じゃなくて…安達が可愛いからこそ部屋も…、みたいな…?」
だけど
そんな風に恥ずかしいのは、わたしだけじゃなかったみたいで。
前にも。
由紀ちゃんの家で 今日と同じことがあった。
あの時から…
「安達と、俺はもう…友達じゃないよな…?」
「…そ…そうだね…!」
「付き合ってるんだもんな…俺たち。」
「…うん、」
「…じゃあ、…さ…っ沙綾!……」
「ッはい!……って、え…いまの…?」
「ほらっ、付き合ったんだし…安達じゃ、駄目かなって…」
「そ…そっか!そうだよね!そうなるよね!」
初めて彼氏に、名前で呼ばれた。
それは私にとって…くすぐったくて、
だけどすごく、すごく嬉しい瞬間。
お互い顔を見合わせられないで、
赤い顔を隠しながら 新しいことに手を出した。
きっとそれは、照れ屋なわたしたちにとっては大きな一歩で。
友達から恋人へ変わる、
はじめの一歩でもあった。