Wednesday ☂
「…そのっ…あのね……」
「うん、」
「わたしね、…由紀ちゃんとならその…
恋人らしいこともしていいから…えっ、と…」
今、ものすごく恥ずかしいこと言ってるよね…
もう、勢い勢い勢い…!!
このまま言っちゃうしかない…
「したかったら言ってくださいっ!!」
静まる下校路に、わたしの声が響く。
我ながら、なに言ってんだろう…
これはいくら由紀ちゃんでも引いて…
「したい。」
「へ…」
「したいよ?いいの?」
「…は…い…もちろん…?」
「俺…手繋いだりするの沙綾、苦手なんだろうなって思ってた。」
や、やっぱり…!
言ってよかった……
このままじゃ、気を遣わせたままになるところだった…
「…そんな風に言われたら、いっぱいしちゃうよ?」
「…え?…あ…あの、由紀ちゃん…?」
安心するのも束の間だった。
わたしの耳元で小さく囁くいつもより低い由紀ちゃんの声に、びくんと身体が跳ねる。
「先に誘ったのは、沙綾だからな?」
人はいないものの…こんな公共の場で…駄目駄目駄目!!
だけど
抵抗すら出来ないわたしは ギュ、と目をつむる。
…数秒後。
なにひとつ変わらない状況がそこにはあった。
…あれ?……なんにも、…ない?
ゆっくり目を開けていくと、
いつもの優しい表情でわたしを見る由紀ちゃんの姿。
「……なーんて。まだ怖いだろ?
…沙綾、俺のためにそんなに急がなくていいよ。
気持ちだけで嬉しいから、な?」
違う…違う。
そんな風に言ってほしいわけじゃないよ…。
気が付くとわたしは、
自分が思うよりはやく行動にうつっていた。