Wednesday ☂
目を閉じたままの 背伸び。
その一瞬で、
唇が重なって すぐに離れた。
1番驚いていたのは、わたしだった。
なにも言えずにもう一度見上げると、
目を見開いたまま固まる大好きな彼の耳が少しずつ赤くなる。
「ッ……え…ぃ、いま……?」
時間差で我に返った由紀ちゃんが、
口をパクパクさせてわたしを見つめる。
「…っ、…で…できるよ…!もう…!」
初めて出た言葉は、
色気も魅力もないため息まじりの
精一杯の強がりだった。
勇気を使いきって黙り込むわたしに
落ち着いた様子の由紀ちゃんが口を開く。
「……っいま、すげぇ幸せだった…
けど…一瞬だったから、よく分からなくて…」
もう、1回…していい?
そのまま返事を待たずに、
由紀ちゃんが二度目のキスをする。
さっきより5秒ぐらい長い…唇の感触。
気を抜けばとろけそうに潤む目が嫌で、強く目を閉じた。
甘い香りで頭がぼーっとする。
「…はぁ、」
終わりと同時に漏れる吐息が、くすぐったい。
まだ現実に戻れないままのわたしに、彼の声だけが響く。
「沙綾…あー…もう…好き!」
そうやって抱きしめられた時間は、
今までで一番彼と近くて甘い瞬間だった。