Wednesday ☂
そうしてる間にもう近くまで回ってきているマイク、
次はわたしの正面の…あれ、確か…隣の席の。
「あ、あー…
栗原 一樹です、一年間宜しく。」
「ちなみに一年のときはマロンって呼ばれてました!」
「おい有村、お前覚えてろよ。」
笑い声に重なって文句を言う栗原くんは、マイクを置いて眼鏡をかける。
……そっか、眼鏡じゃなかったからわかんなかったんだ!
納得しているうちに、隣の由紀ちゃんがマイクを持つ。
つ、次か…っていうか由紀ちゃん。
どんなこと言うんだろう?
「橘 由紀です。で…隣が安達 沙綾。
この子は俺の彼女だから手出さないでください。宜しく。」
……。
シーン…と静まる部屋。
だけどそれにも動じないで、わたしの隣へマイクを渡す由紀ちゃん。
口をぱくぱくさせたままのわたしより先に、
クラスの女子が歓声を上げた。
「ッよく言った由紀!!やっぱあんたはイケメンだよ!」
「やばいやばい!!今心臓止まった!」
「なにもう!橘くんかっこいー!!」
…ぎゃ、逆だよ…由紀ちゃん!!
わたしじゃなくて由紀ちゃんのほうが当たり前に心配だよ!
心の中で叫びながらも、顔を上げると
前にいる栗原くんと目が合った。
その瞬間に、ふぃと目を逸らされる。
…え?
なにか悪いこと、したかな…
明らかに、さっきの自己紹介とは違う雰囲気の彼に疑問を持ったけど
またすぐに自己紹介が再開したようで、
時間とともにそのことも頭から薄れていった。