Wednesday ☂

自己紹介も終わりを迎えて、
男子たちがはっちゃけてマイクを奪いあっては定番の歌が流れる。

そんな空間に慣れてきた頃、
冷たいオレンジジュースばっかり飲んでたせいか少し肌寒くなった。

今日、あったいから薄着で来ちゃったよ…

冷え症な自分の選択ミスに後悔しながらも肩をさすると、

由紀ちゃんが大音量の中、わたしに近付いて声をかけてくれる。

「沙綾、寒い?」

「あ、…うん。ちょっとだけ。」

「…ほら、これ着ておいて?」

「っいいよ、由紀ちゃんが寒いよ…?」

手渡された由紀ちゃんのパーカー。


ほんとは借りても……っいや駄目!
甘えるだけはやめる、ってさっき決めたばっかりだし!


「心配しなくても俺は沙綾みたいに冷え症じゃないよ。」

「そ、そういう問題じゃ…」

「…んー、じゃあさ俺のお願い聞いてくれる?」

「ッなに?聞くよ!」

わたしの頭の中を察したのかは分からないけど、
頼ってばかりだったわたしにとって
《お願い》はすごく嬉しかった。


「男避けのために、これ着てて?」


「えっ…そ、それって…さっきと言い方変えただけだよ…!」

「あれ?お願い聞いてくれないの?」

「…もう。…由紀ちゃん、ずるい…」


結局、借りたパーカーに袖を通して
隣で満足そうな由紀ちゃんにまた優しくしてもらった。






「楽しそうだねお二人さーん」

「ずるいずるーい!!」

「…逢坂も七瀬さんも呑んでるだろ絶対。」

「残念!高校生は呑めませーん!」

「ハイハイ、わかったから。」

いつもよりテンションの高い華凛とリーダー格の七瀬さんが来たことで賑やかになるテーブル。

誰かが歌ってる純恋歌をBGMに
いつの間にかトーク会場になっていた。


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