Wednesday ☂

由紀ちゃんがドリンクバーに行くために席を立つと同時に、

「このクラスあれだね、イケメン多いよねっ!」

と、七瀬さんがわたしを見ながら透る声で話題を作った。

…ハキハキしててかっこいいなぁ、
華凛とはまた別のタイプのお姉さん系だ。

バレー部らしいショートカットが小さい顔によく似合っていて、女の子同士だけど目を見られるとドキッとする。

「そっかな〜由紀と東麻ぐらいじゃないの?」

「いやいや、秋斗くんも入学したときから有名だし…
ほらそこのマロンも一年のときはモテてたんだよ!」

「マロン…?」

七瀬さんの視線の先にはいつの間にかまた眼鏡を外してる栗原くん。

さっきの目を逸らされたのを思い出して、少し気まずい。

「…おい七瀬、なに人の顔見て笑ってんだ。やめろ。」

「マロンはね、すっごく人見知りでさ。
目悪いくせに人の顔見ないために、話すときは眼鏡外すんだ〜面白いでしょ!」

「人の欠点で盛り上がるな。
人見知りじゃない、ちょっと苦手なだけだろ。」

「マロン、大丈夫よ。
マロンの席の隣もヘタレで人見知りだから。」

「なんであんたまでその呼び方なんだ…」

華凛の言葉で彼のの視線がわたしへと向かう。
今度は、逸らされなかった。

「橘の彼女、宜しく。」

「…あ、こちらこそ!マロンくん!」

「栗原です。」

みんなに釣られてマロンくん呼びのわたしに、ため息をつくマ…栗原くん。

そこで、由紀ちゃんが帰ってきた。

「あれ、なんか楽しそうだな。」

「いや…助けてくれ、橘。
このクラスの女子は俺の名前をマロンだと思ってる。」

「ん?いいじゃんもうマロンで。」

肩を落とすマロンくんは、
たぶん一年生の時からの愛されキャラなんだろうな…

新しい友達も出来て、
すっかりこのクラスに馴染めたカラオケも1時間後にお開きになった。


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