Wednesday ☂


目当てだった恋愛映画を見つけて気分が上がっていると、奏汰もCDを抱えていた。

「うわキモ…そんなの見て楽しい?」

「な、な…ッほっといてよもう!」

「人の恋路みてなにが面白いんだか。」

「奏汰には女心がわかんないの!!」


はいはい、とつまらなそうに返事する馬鹿にフンと背を向けてレジへ向かう。

…なんでも突っかかってくるんだから、いつまでたっても優しさを知らないし。

バカバカバカバカ
身長だって前までは一緒ぐらいだったくせに!


「なんか文句言ってんだろ」

「い…言ってないし!」

「わっかりやすいんだよな、単純だし。
んな顔しても怖くねぇし…あ色気もないな。」

「うるさい!ほんっとうるさい!」


口を開けばすぐに馬鹿にしてくるし…
ああもう!昔は可愛かったのに!!

喧嘩をみて笑い気味の店員さんに、
少し恥ずかしくなりながらも奏汰を放ったまま店を出る。


すると、すぐに追いつく足音。


「姉ちゃん拗ねんなよ」

「…拗ねてない怒ってんの」

「ほっぺた膨らましてるくせに?」

ぎゅう、とすごい力でほっぺを抓られてすぐに涙目になった。


「いひゃい!はなひて!」

「んじゃ離したら許してくれる?」

「ゆるひゅから!」

パッと離した手に奏汰は調子が良さそうに笑う。

「仲直りの証に俺様がクレープ奢っちゃろ。」

……なんか、乗せられた気がする。

姉使いの上手い弟の罠にはまりながらも
ご馳走になってしまうのがわたしの甘いところだ。






「奏汰!わたしストロベリーアイスケーキDXね!」

「いいけど太るぞ。」

「…う、動くもん。」

あっそう、と簡単に返事をしながらも
店員さんに長い商品名を伝えているとこを見れば、

今日だけは…憎まれ口を叩くのも、許してあげられる気がした。
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