Wednesday ☂
「いただきます!」
「味わって食えよ。初のバイト代なんだから。」
「へ…!?」
食べかけた口を止めて奏汰を見ると、
少し照れ臭そうに下を向いていた。
「い、いいの…?」
「なにがだよ。」
「だって「母ちゃんと父ちゃんには寿司。
姉ちゃんだけ安く済んで良かったわ。」
またそんな風に言って…素直じゃない、
だけど優しいところは伝わってきた。
初任給を家族に使うって、
ほんとは家族想いでいい子なんだね。奏汰。
「…おいニヤニヤすんな気持ち悪い」
「えへへ〜可愛いところあるね奏汰も」
「うっせぇバーカ早く食え」
いつの間にか大きくなって
身長もわたしを超して
体格も変わって声も低くなった
それでも照れ屋で素直じゃなくて、
わたしに文句ばっかり言う反抗期なところはそのままで。
なんだか…
「…うん、いい弟を持ちました。」
「そりゃ良かったな。」
「でももう少し素直でも「由紀ちゃん先輩だ。」
綻んだわたしの言葉に被せて、奏汰がぽつんと呟く。
「なに…もう騙されないってば」
「いや、ほら。そこ。」
真面目な顔で指を指した先には、
何人かの友達と歩いてくる由紀ちゃん。
…あ、そ…そっか!
今日は友達と買い物行くって言ってたもんね!
「声掛けなくていいわけ?」
「だ、だってせっかく友達と一緒にいるのに。」
「ふーん、
…だけど向こうはそうじゃないっぽい。」
「え?」
言葉の意味がわからなくて、前を見ると
由紀ちゃんが明らかにわたしの方向に走ってくる。
「すげぇ速いけど、なんで全力疾走してんだろ。」
「う…うーん…?」
よく分からずに近付いてくる彼の姿を見ていると、
明らかに焦った表情をしているのが分かった。
…え?どうかしたのかな…?
10秒後、
すぐ目の前に現れた彼は息を切らしながらハァ…と口を開いた。