マーメイドの恋[完結]
そうではないかとは思ったが、倉沢は改めて驚いた。
歩くとなると何時間もかかるのだ。
歩くのは無理なので、送っていきますと倉沢は言ったのだが、マーメイドは歩きたいのだと言う。
このチャンスを逃すと、もう二度とチャンスは巡って来ないような気がして倉沢は焦った。
あなたのことが好きなので、話を聞いて下さいなどと言ってしまったのだ。
こんなことを突然言う男など、信用するわけがない。
マーメイドは、相当警戒しているらしく、名刺を見せてくれと言った。
倉沢は名刺を持たないので、自分の名前と仕事先を伝えた。
すると、どこで話すのかとマーメイドが言ってくれた。
話してもいいと思ってもらえたのだ。
車の中でというわけにもいかないので、食事でもしませんかと言った。
マーメイドは食欲がないと言う。
南木海岸なら、マーメイドも安心するのではないかと思い、南木海岸へ行きませんかと言ってみた。