マーメイドの恋[完結]

寒くもないのに、歯がガチガチと鳴るくらいに身体が震えていた。
優しいマサが、自分にこんな思いをさせるほどのこととはなんなのか。
その答えは、とても怖いことにしか思えなかった。


なんとか階段をのぼり、304号室の前に着いた。
呼び鈴を鳴らしたが、応答もないし誰もでてこない。
やはりいないのだ。
夏子は少しホッとしていた。
だが、どこかで時間を潰し、夜にまた出直さなくてはならないのは大変なことだ。


夏子は念のため、ドアノブを右に回してみた。
カチャという枯れたような音がしてドアは開いた。
それと同時に部屋の中から、人の声が聞こえてきた。


うめき声?
そう思ったと同時に、目に飛び込んできたのは、マサが女の人に馬乗りになっている姿だった。


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