マーメイドの恋[完結]

博多駅で新幹線を降りて、無意識のうちに伊原のマンションへと来てしまったらしい。
感情をなくしたようになっていた夏子だったが、自分の部屋に戻り、マサのことを考えることが怖かったのだ。


「どげんしたとね?何かあったと?俺に会いに来てくれたとやろ?」


夏子は言葉を発せずに呆然とするだけだった。


「部屋に行く?」


伊原にそう言われて、夏子は首を横に振った。
伊原に会いたかったわけではないのだ。


「夏子。俺はずっと待っとたとよ。その証拠のものがあるけん、一緒に行ってくれんね?」


「ごめんなさい。私帰ります」


「頼むけん一緒に来て。嫌やったらすぐに家まで送るけん」


なんだかもうどうでもいい気分に夏子はなっていた。
今の夏子は、魂のない人形と同じようなものなのだ。
伊原の言われるままに、伊原について行った。
伊原は、自分の部屋に行かずに、駐車場へと歩いていく。


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