マーメイドの恋[完結]
「おかえり夏子」
座り込んで、さらさらと砂をすくって遊んでいると、マサの声が聞こえたような気がした。
ーバカじゃないの私。まだマサのこと忘れてないのかしらー
「夏子!」
今度ははっきりと、マサの声が後ろから聞こえた。
恐る恐る振り返ると、やはりそこにはマサが立っていた。
「どうしたの?」
「待ってたんだよ、夏子を」
わけがわからない。
自分はもう、あのマンションにはいないのに。
マサは知らないのだ。
「私、あのマンションには今はいないのよ」
「知ってるよ」
ー知ってる?じゃあ待っててもいつ来るかわからない私を、いつから待ってたと言うのー
「夏子、帰ろう」
「さっきから何を言ってるの?帰るってどこに?それと悪いけど、もう話しかけないでもらえますか」
マサは、あの日のことを何だと思っているのだろうかと、夏子は腹が立ってきた。