マーメイドの恋[完結]
「夏子、帰ろうか」
「ねえ、さっきから帰ろうって言ってるけど、どこに帰るつもり?」
「あはは。もちろん、あのマンションだよ」
「だから、あのマンションはもう売ったんだってば!」
「俺が買ったんだよ。夏子の売った部屋を」
「え〜?嘘でしょ?」
「嘘やないよ。ほら、マンションのキーもあるよ」
確かに。
マサは、夏子が売ったあとに、たまたま売れていなかったあの部屋を購入したのだ。
「お金、大丈夫だったの?」
「ローンだけどね、頭金を老人ホームの施設長に前借りして、後はコツコツと働いて返すよ」
「大変じゃないの」
「大変でも、夏子との新婚生活は、あそこが一番だからね」
「なにそれ」
「結婚するんだよ。俺と夏子が」
「なに勝手に決めてんの」
「いいから。さぁ、今から新婚初夜にするよ」
「もう、マサったら〜。プロポーズくらいロマンチックな言葉にしてよ〜」