マーメイドの恋[完結]
先輩って誰のことなのだろうか。
今日はモモとふたりだけで、話すことになってたはずなのにと、夏子は首を傾げた。
「先輩って?」
「いいから来ればわかるよ」
仕方ないので、夏子はバーのドアを押して中に入った。
店内はロカビリーの音楽が流れ、インテリアなどもロカビリー調のもので統一されていた。
ロカビリーなのかロックというのか、夏子にはよくわからなかったが、マスターの趣味なのだというのは予測がついた。
あまり広くない店内のカウンターに、モモが座っていた。
「ナツ〜こっちこっち〜早く〜」
モモひとりしかいないけど、先輩ってどこにいるんだろうと思いながら、夏子はモモのいる方へ歩いた。
「いらっしゃい。夏子ちゃん」
マスターが夏子の名前を呼んだ。