マーメイドの恋[完結]
悲しみや怒りよりも、自分が情けなかった。
わかっていたはずなのに。
ああいうタイプの男は、本気で結婚なんか考えていないってことは。
男に騙されやすい女。
それが自分なのだ。
簡単に騙せて、簡単に捨てても何とも思わない。
そんな女なのだ。
もう男なんか好きにならない。
夏子はケータイを取り出し、伊原にLINEを送ることにした。
「あなたの彼女さんが部屋にいたので帰ります。さようなら」
そう打って、伊原をブロックした。
地元の駅に着いた。
その途端、涙が溢れてきた。
あんな男でも、はじめて本気で好きだと思った人なのだ。
ーあんなに楽しかったのにどうして?エッチができればそれで良かったの?ー
駅からマンションまでは、バスかタクシーに乗らなければ、かなりの道のりがある。
しかし、夏子は歩いて帰ることにした。