重奏 ‐アンサンブル‐
―――やはり、食えない男。演技しておいて正解だった。



平助が大きな声で話をしたのは最初だけ。

山南が姿を現すまでの数十分の間は普通の音量だった。

それなのにも関わらず、話の内容を知っていたのは聞き耳を立てていたからに違いないと菖は推測する。


人が行き交う屯所内、僅かだがこちらを窺う気配はあった。

だから念の為、現れた山南に驚いた演技をしたのだ。



さすが京の街を守っているだけのことはあるようだ。
< 12 / 61 >

この作品をシェア

pagetop