重奏 ‐アンサンブル‐
中には簪、それも菖が小物屋で見ていた紫色の菖蒲があしらわれたものだ。



「やる。」


「えっ、でも…」



「いらなかったら捨てろ。返されても困る。」



そう言うと土方は明後日の方向を向いてしまった。



「…………。ふっふふふ…」


「なんだ。」


「いえ。」



土方の態度に失笑してしまう。

居心地が悪そうにする土方に睨まれるも全然怖くない。



「ありがとうございます。大切にしますね。」



笑いながら髪にさす。



「どうですか?」


「馬子にも衣装だな。」


「もぅなんですかそれ。」



自分で贈っておいてなんという言い草だろうか。


そう思いつつも、照れてぶっきらぼうになっているだけだと丸わかりで、笑いが止まらない菖だった。
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