重奏 ‐アンサンブル‐
「菖、今いいか?」


夕餉を食べ終わって一息ついていると外から土方の声がする。


「どうしたんですか、このような時間に。どなたかの具合でも…」


「いや、違う。ちょっと出れるか?」



不思議に思いつつも付いて行くと、長屋の裏手にある小さな川の畔に土方が腰を下ろしたので菖もそれに倣う。



「今宵は空気が澄んでいるし、月見でもしようかと思ってな。」



土方は持っていた風呂敷包みを開け、中の重箱も開けるとそこには…



「ずんだ餅…」


「良い枝豆が手に入ったから作らせた。」



お重の中には、鮮やかな緑色をしたずんだ餅が詰められていた。



「ふふ、ずんだ餅でお月見ですか?」


「いいだろ、餅なんかなんでも。」


「そうですね。」



月明かりの下、ずんだ餅を食べながら2人で月を愛でる。
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