重奏 ‐アンサンブル‐
―――数年前、レイスは近くの裏山へ足りなくなった薬草を採りに行っていた。


帰ってくると人だかりができ騒がしい。


その人だかりの中心には土方と沖田それに平助がおり、周りには数十人の隊士が残党を捕縛している。



「そいつを渡せ。」


「この人は怪我人なんだ。」


「怪我人だろうがなんだろうが、そいつは幕府に背いた。それを取り締まるのが俺達の仕事だ。」


土方と厳羊が押し問答を繰り返していた。



「もうおっちゃん、聞き分け悪ぃなぁ。そいつは悪い奴なの!捕まえなきゃいけないの!」



平助が説得するも、厳羊は頑として譲らない。


薬師として、反幕府であろうと怪我人を治療の途中で投げ出す訳にはいかない。

誰であろうと、どんな立場にいようと。

それが、厳羊の信念だからだ。



「土方さんどうします?これじゃあ埒があかないですよ。」



平助が説得している間、沖田が小声で話しかける。
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