重奏 ‐アンサンブル‐
「そうだな。こいつらみたいな倒幕志士を庇う奴がこれからも出てきては困る。」



土方は眼光を鋭くし、刀を鞘から抜くと声をあげる。



「誠の名の下に全員粛清だ!」



「「「了解!!!」」」



土方の一声により、町の民にも牙を剥く。



「なんてことを…!!」


「どう思われようが関係ない。これが俺達の、新撰組のやり方だ。」



ザッ………――――



土方は、厳羊の首先に向けた切っ先を真横に振り切った。



!!!



厳羊の頭と胴体が崩れ落ちる。

その様子を、逃げ惑う人垣の合間から見ていたレイスは動けなかった。


まるで、地獄絵図を見ているようで。



「!」



突然誰かに引っ張られる。



「女将さん…」



見ると、宿屋の女将だった。


歳は60を超えているのにとても元気で、とても優しい人。



小さな町の人々は、倒幕志士も旅人も優しく迎え入れてくれた。



そう、ここは山に囲まれた小さな宿場町。

来るもの拒まず、去るもの追わず

そんな寛容な町だった。
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