重奏 ‐アンサンブル‐
どこにそんな力があったのだろうか。


歩みを止めたのは、山を2つ程越した後。

何十年も人の住んだ気配がない荒れ果てた村を目の前にした時だった。



叫ぶ気力すらないはずなのに、鳥が驚いて逃げるほどの大声で泣いた。


悲しいのか、寂しいのか、悔しいのか、憎いのか、

何が何だか分からないけれど、涙だけはいつまででも溢れてくる。



…………



どれくらいの時間が経ったのだろうか。


陽が沈んでゆくので、夕刻だろう。



―――許さない、絶対に。




泣き腫らした目には、強い光が宿っている。


倒幕志士から聞いた噂。

反幕府勢力に加担する暗殺組織があると。



復讐という名の狂気は、『菖』を変えた。


薬師としての仕事を活かし、裏社会に染まって情報を探した。


そして、鞍雀に辿り着いた。

鞍雀の方も自分達を探っている人物がいると気付いていたので話は早かった。



いつか新撰組に、土方歳三に、復讐出来ることを信じて『薬師 菖』は『暗殺者 レイス』となった。
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