重奏 ‐アンサンブル‐
「貴方は覚えていないでしょうね。小さな宿場町の小さな出来事。だけど、私にとってはとても大きな出来事だった。」



そう、一人の優しき少女を暗殺者にまで変えた出来事。



「倒幕志士でも助けるのが師匠の…薬師としての信念だったから、目を瞑ることが出来なかった。」



「宿場町……倒幕志士……」



土方には思い当たる節がいくつもあった。

それもそのはず。

新撰組として粛清した数は多い。

大きな功績をあげたものなら多少なりとも覚えているが、小さいものは覚えていない。


後ろは振り返らない、前だけ見て突き進む。

結成の時、誠の旗に誓った。

そして、そう思い続けなければ潰れてしまいそうだった。

何人斬ろうが、罵られようが、鬼と恐れられようが、構わない。


幕府の為……じゃない。

京の為、
そして平和の未来の為に。
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