重奏 ‐アンサンブル‐
「お母ちゃん…どこ…」


「!」



菖の目の前に5~6歳ぐらいの女の子が厠を終えたのだろう、付いてきた母親を探していた。



「いたぞ!」


「!!」



「きゃぁ!!」


「なっ……!!」



「茶代っ!!」



追い付かれると思った菖は、女の子――茶代(サヨ)を抱え人質にし側の林へ。



「茶代!!茶代を助けて下さい!お願いします!!!」


「大丈夫です。落ち着いて下さい。」



叫ぶ母親に山南が冷静に話し掛ける。



「何ボケッとしてる!追い掛けるぞ!!」



土方が追い付き沖田と平助に檄を飛ばすと、菖と茶代が消えた林に向かう。


母親を連れてきた隊士に任せ、近藤と山南も追い掛ける。



「(直前とはいえ、作戦を変更して正解でした。)」



追いながらも山南は思う。


万が一のことを考慮し、討ち入りのメンバーから沖田と平助を外し出掛けたと見せかけて待機させていたのだ。


まさか相手が菖とは、さすがの山南も思わなかったのだが。
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