重奏 ‐アンサンブル‐
「ぃゃはなして…」



恐怖で声は小さいものの嫌だ、離して、と茶代は繰り返す。



「………。」


「…ぅぇ?」



林の中腹まで来た時、菖は茶代を降ろす。



「ごめんね。ここで待ってれば迎えが来るから。」



今日は満月。

林にも月明かりが射し込み明るい。茶代をその明かりの下へ。



「動いちゃ駄目だからね。」


「おねぇちゃん…??」



離れる菖に茶代は首を傾げる。



「……怖い思いをさせてごめんね。」



菖は茶代の頭を撫でた後、林を進む。

泣きじゃくる茶代が幼い過去の自分と重なってしまって、これ以上一緒にいられなかった。



「あ、いた!」


「ねぇ、お姉ちゃんどっち行った?」


菖が茶代から離れてから数分後、平助と沖田が来て菖の行方を尋ねる。



「あっち…」


「よし行くぞ!」



茶代の指差した方向へ土方達は進む。



「?」


土方達が去った後、茶代は足下に何かを見付けた。



「あれ……?」



茶代救出の為土方達の後を付いてきた隊士が、こっちにいる。連れていけ、と沖田の声が聞こえたのでいるはずなのだが…

茶代の姿を探すも見当たらない。
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