重奏 ‐アンサンブル‐
「お姉ちゃん!!」


「!!」



緊張感漂う空間に響いたのは、菖を呼ぶ茶代の声だった。



「なんで……」



茶代の登場で皆の殺気が消える。



「お姉ちゃん、これ。」


「これ………」



菖に近付いた茶代の掌にあったのは簪。

それも紫色の菖蒲があしらわれた菖のもの。



「落ちてたから。」



菖に抱えられた時、懐から見え隠れしていた簪を茶代は見ていた。

それが茶代を降ろした時落ちて、届けようと後を追ってきたらしい。



「大事な物は胸のところに入れるってお母ちゃんが言ってた。お姉ちゃんの大事な物でしょ?」


「……そう、だね。ありがとう。」



茶代の言葉に一瞬目を見開くが、簪を受け取り懐へしまう。


そんな菖を複雑な思いで見つめるのは土方だ。

まさか自分を復讐で殺そうとしているのにも関わらず、まだ簪を持っていたとは。


屯所で過去を語った時も近藤の言葉に返した時も、復讐を遂げているいう感じはしなかった。


菖の気持ちが分からない。
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