重奏 ‐アンサンブル‐
バンッ――――――………





「!!!」



神秘的な満月の夜に似つかわしくない、鈍く重い銃声が響き渡る。

その音に胸を赤く染めたのは2人。



短刀を投げ捨てた菖と
拳銃を握ったままの鞍雀だ。




「菖っっ!!」



撃たれそうになった菖を土方は庇おうとした。

だが、それに気付いた菖は土方を突き飛ばしたのだ。


まさに、一瞬の出来事。




「何故、この私が……お前らごときに………」



撃つと同時に短刀が左胸に刺さった鞍雀は、そのまま倒れ絶命する。



「くそっ、間に合わなかった…」



短刀を投げたのは沖田。

屯所前で菖が投げ付けたものだ。


発想は良かったが普段短刀など使わない為、拳銃を狙ったつもりだったが外れてしまった。



結果的に鞍雀を倒せたのは良かったものの、発砲には間に合わなかったようだ。



「菖!!」



膝から崩れ落ちる菖を、土方は抱きとめる。



「菖――!!」



残りの数人を倒した平助達も菖に駆け寄る。


指令役がいないと機能しなくなる。

それが自我を持たないドールの唯一の弱点だ。
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