重奏 ‐アンサンブル‐
「おい、菖!目を開けろ!」



隊服が血に染まるのも構わず、土方は菖を抱き締め呼び続ける。



「(これは外国製の…。それに医療班を呼んでも、この出血量では…)」



山南の見たところ、鞍雀の持っていた銃は外国製で威力も高い。

派手に動き回った分、刺された傷口が開いて更に出血し、菖の顔は青ざめている。



「「菖!!」」



平助と沖田も懸命に呼び掛けるが反応がない。



「しっかりするんだ!」



隊士にこの場の処理を命じた近藤も呼び掛ける。



「……なんて顔…しているんですか……」



うっすら目を開けた菖が、土方の表情を見て唇を動かす。


浅く荒い呼吸を繰り返し、息をするのもやっとの状態だ。



「お前もう喋るな。今医者呼んでやるから。」



「医者…って…無駄足…ですから…止めて…ください。」



「んなこと言うもんじゃねぇ!無駄足になんか絶対ならねぇ。」



土方の強い声に菖は小さく笑う。
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