重奏 ‐アンサンブル‐
「私…医者ですよ。自分の…状態…ぐらい、分かります。」



動かない首の代わりに目だけ動かし周りを見やる。



「私…より、土方…さんを…。他の…皆さんは、怪我…していない…ようですね。良かった。」


「人の心配してる場合じゃねーって。」



殺そうとしていた相手を気遣う菖に、平助は止血している手に一層力を込める。



「医療班まだかよ…」


「まだ着かんのか?!」


「い、今向かっている頃かと…」



屯所からの距離はそれほどない。

だが、一刻を争う状態に苛立ちは募る。



「ふっ、ふふふ……おかしな…状況……ですね。」


「あ?」



菖がそう言い笑う。



「殺しに…きた私を…心配して…いるんですから。」



「そう…だな…」



菖の言葉に土方も少し笑う。



「手…疲れますよ。もう…いいですから。」


「何言ってんだよ!全然疲れてねーから!」



止血している平助の手に自分の手を重ね、大丈夫と意思表示する。


そんな菖に、涙を浮かべながらも安心させるように口元に笑みを作る。
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