重奏 ‐アンサンブル‐
「私…復讐…したかった…んです…」



過去を思い出しているのか、菖は遠い目をする。



「だから、組織に…入ったんです…」



思い出すのは、復讐を誓ったあの日のこと。



「貴方を、殺したかった…師匠達の命を…奪った貴方に。」



復讐する為だけに生きてきた。
殺す為に暗殺者にもなった。

それほど土方の死を望んでいた。

だけど………。



「じゃあなんで俺を庇った?!」



―――復讐したい俺なんかを…


菖の言葉に、土方は悔しそうに顔を歪める。



「仕方が、ないじゃ…ないですか…体が…勝手に動いたん…ですから。」



ははは、と力なく笑う。


結果も、望んでいた結末も、
現実はまるで違っていた。


それでも、泣くより先に笑うことが出来るのは……


―――貴方が生きているから。なのでしょうか……



心の中での問いに、土方は気付けない。
< 50 / 61 >

この作品をシェア

pagetop