重奏 ‐アンサンブル‐
「薬を研究…している時、楽しかった。それに、お月見も。こんな綺麗な満月…でしたよね…」



土方の後ろに見える満月は、地上の殺伐とした状況とは真逆に煌々と輝いている。


魅入られたのは、
天使(恋)か?悪魔(死)か?


その答えは、菖にしか分からない。



「それに、簪、嬉し…かったんですよ。花…言葉も含めて…貴方がくれたから。」



視界の端に映るのは捨てられなかった簪。


茶代の言う通り大事なもの。

土方に貰ったものだから、捨てられるはずが無かった。



「消え…ようと…思って…いたんです。でも私…が消えても計画は遂行…される。…だからせめて、私の手で…と思って…いたのですが。上手くは…いきま…せんね…」



ゴポッと血の塊を吐き出す。



「菖っ!いいから黙れ!もう喋るな!そんな事、後でいくらでも聞いてやるから!」



そう―――、

医者が来て、傷を治療して、治ったら、いくらでも……
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