重奏 ‐アンサンブル‐
オラシアは暗殺組織。
それは間違いのない事実だ。


だが、裏の世界でも知る人間が限られている真実がある。



それは、暗殺と同時にそれを奏楽つまりショーとして、貴族達に娯楽を提供しているのだ。



「今回は新撰組との戦いが見たいとの要望だったから、始末しなくても構わないんだけれど。」



京を強靭に守る新撰組をドールと戦わせてみたいと。

あわよくば、幕府までも。



「人間の心というものは、いくら強くあろうとも移ろいゆくものなのかね。」



己の見込み違いだったかと感傷に浸る。



「鞍雀もいい働きをしてくれていたのにねぇ。惜しい事をした。」



ドール達は見世物であり、シナリオを遂行する駒でしかない。

このことは、ドール達は勿論、長年ドールを見てきた鞍雀でさえ知らされてはいなかった。
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