重奏 ‐アンサンブル‐
『無常に過ぎゆく時が奏でた協奏曲(コンチェルト)』



レイス…いや、不知火菖の復讐劇が失敗に終わり早数ヶ月……


京の町は相変わらず、新撰組の見廻りのおかげで平和だ。



『幻想的(ファンタスティック)に、郷愁的(ノスタルジック)に』



菖がいなくなって騒がしくなったのも数週間。

何故なら、旅人が多い京の町。

流れの薬師が突然いなくなろうとも、気にするのはほんの一時のこと。



『流れる様(レガート)に、時々思い出す様(スタッカート)に』



沖田と平助が、お別れは寂しいから……と別れを告げずに旅立った。と騒いだ町民に説明したのも大きな要因だ。



『複雑に絡み合った音(オモイ)は、解こうにも元に戻せない』



新撰組も何事も無かった様に日常を過ごしている。



『ついに最後には無音になってしまった』



近藤は幕府の要人と会合

山南は監査の山崎と作戦を練り


沖田は剣の修行に励み

平助は団子の大食い記録に挑戦


土方は鬼の副長として前にもまして厳格に




何も変わらず、笑ったり、泣いたり、怒ったり。

その裏に抱えているものを微塵も見せることなく。
< 59 / 61 >

この作品をシェア

pagetop