重奏 ‐アンサンブル‐
ただ違ったのは、屯所の片隅に小さいお墓が建てられていたこと。

一見犬や猫の墓と見間違う程の簡易なもの。



ひっそりと建てられたそれは、菖の墓だった。




ドール達は処理出来たものの、菖だけはどうしても出来なかった。

かといって、大っぴらには建てられない。


泣きつく平助に、山南が提案し屯所に建てたのだ。



討ち入りの行き帰りに報告したり、日々の愚痴や出来事を話したりするのが、新撰組屯所内での密かな日常となっている。



更に満月の夜には、季節の甘味を肴に月見をするのが、土方の心の拠り所にもなっている。




それは、何も変わらない、けれど何かが変わったという証拠なのだろう。
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