不器用プロトコル
はじまり

期待


「またいんのかよー!ありいー!」

始業式が終わったあとの教室で声をかけてきたのは、同じ吹奏楽部の美沙。ついに最後の高校生活が始まった。

「美沙!また同じクラスじゃーん。」
「よかったでしょ?」

そう言って笑う美沙。二人ともちょっとテンション高め。というか、クラス全体がテンション高め!みんな久しぶりの学校だからそわそわしてる感じがする。……まぁ、私たちは部活だから毎日学校に来てたんだけどね。卒業式に入学式に始業式、毎年全部演奏しないといけない。

「新入生どんだけ入ってくるかなぁ」

美沙がそう言った。吹奏楽部の私たちは、今年の夏の大会が三年間の集大成になる。出場メンバーの定員は50人なんだけど、今の部員は35人。金賞を取れるかは、次の一年生が大きく影響してくる。私は浮かない顔で答えた。

「どうするー?未経験者が5人とかだったら」
「うわー辛いわ。その5人をみっちり鍛えるけどね」

さすが美沙。副部長なだけある。

「でもさー、美沙、心配なのは部活だけじゃないよ……」

私たち吹奏楽部は、皆が部活を引退して受験勉強に取り組んでいるはずの、8月まで部活がある。

「そうだよねー。彼氏つくんないとねー最後だし」
「そっちかよ!」
「わかってるって!受験でしょ!?」

そう言って笑う美沙。彼氏かー。高校生になったら彼氏ができるもんだと思ってたのに、全然だったな。

もう無理でしょ!「今でしょ」じゃないでしょ!もう遅いでしょ!
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