不器用プロトコル
キーンコーンカーンコーン……
「あ、鳴った!ありい後でね!」
そう言って美沙は自分の席に戻っていった。
静かになっていく教室。
なんだか変だな。ベルがなったらこうやってさ、慌てて座って先生を待つって、幼稚園の頃からずっとやってきたんだよ。
狭い教室に並べられた机。
みんなおんなじ服。
1年間一緒のクラスメイト。
大学になったら、全部なくなるんだね。
この空気はもう二度と味わえない。
大学ってどんなところかな?
ジュースを飲みながら授業を受けてもいいんでしょう?
テストはレポートなんでしょう?
制服はないんでしょう?
何もかも違う。
ずっと制服着てさ、ベルがなったら席に着くって教わってさ、なのに、そんなの必要ない世界にいきなり放り投げられるんだよ。
じゃあさ、私たちが今まで当たり前と思ってやってきた事って、なんのためなんだろうね。
いつのまにか先生が来て、新学期の話を始めてる。
窓の外を見ると、真っ白なグラウンドに桜が降っていた。
来年、桜を咲かせないとなあ。辛い!