先生がくれた「明日」
必死に考えた。

今まで、ずっと真面目にやってきたんだ。

危ないことなんてしなくても、ギリギリでも、弟と二人暮らしてこられた。


だけど、


歩の顔が浮かぶ。

育ちざかりの歩に、もっとおいしいもの食べさせてあげたいな。

たまには、みんなが持ってるゲーム機とか買ってあげたい。

本当は欲しいくせに、絶対に私にねだったりしない歩に―――



「分かりました。やります。」


気付いたら、震える声でそう答えていた。



「ありがとう。」



オーナーが手を差し出す。

私は、遠慮がちにその手を握り返した。



「もしもすべて調べ終わったとしたら、ここでウェイトレスとして働いてほしい。時給はそのままだ。」



そうだ。

早く調べ終わればいいんだ。

それでそのままの時給で働けるなら、そんなにいいことはない。



「よろしくお願いします。」



もう一度頭を下げると、オーナーは満足そうに笑った。

頭をかすめた悪い予感に、気付かないふりをしていた私。

こんなこと、いいわけないって分かっていたくせに―――
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